JW22【神武東征編】EP22 合体、そして難波へ

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 播磨灘(はりまなだ)の中央に位置する家島諸島(いえしましょとう)に到着した、狭野尊(さの・のみこと)(以下、サノ)一行。


 現在地

  そこで、四代目先導こと槁根津日子(さおねつひこ)(以下、サオネツ)と出会ったのであった。


 前回は椎根津彦(しいねつひこ)(以下、シイネツ)との類似性について説明をさせてもらったが、そのことについて、長兄の彦五瀬命(ひこいつせ・のみこと)(以下、イツセ)は、ある考えを巡らしていた。


 イツセ「とにかく『日本書紀』ではシイネツで、『古事記』ではサオネツなんやろ?」


 シイネツ・サオネツ「そうです。」×2


 イツセ「っちゅうことわ、同一人物っちゅうことでもある。」


 シイネツ・サオネツ「そういうことになりますね。」×2


 イツセ「今後の話の展開を考えた時にやな・・・。まあ、二人おるっちゅうんわ、何かと不便なんやないかと思うんやじ。」


 シイネツ・サオネツ「えっ?! それはどういうこと(っちゃ)(でっしゃろ)?」×2


 イツセ「そこで、二人には、ここで合体してもらおうと思うんやじ。」


 シイネツ・サオネツ「えっ?! 本当(まこち)(ホンマ)?」×2


 ここで、次兄の稲飯命(いなひ・のみこと)が反対の声を上げた。


 稲飯(いなひ)「兄上、合体って・・・。本気で言っちょるんですか?」


 イツセ「本気っちゃ。作者の陰謀とサノの神秘的な力をもってすれば、できるはずっちゃ。」


 稲飯(いなひ)「ほぼほぼ、作者の陰謀で成り立つ話やないかっ!」


 イツセ「まあ、そう言わんでくんない(ください)。では、サノっ! 任せたっちゃ。」


 サノ「では、本邦初の合体実験を試みまする。合体せよっ!」


 光に包まれたシイネツとサオネツは合体してしまった。

 半分がシイネツ。

 もう半分がサオネツという姿である。


 サノ「よしっ! これで完成じゃ!」


 イツセ「コンビ名は・・・どう致す?」


 サノ「コ・・・コンビ名?」


 ここで、目の周りに入れ墨をした大久米命(おおくめ・のみこと)が提案してきた。


 大久米(おおくめ)「あのう、シイネツ殿とサオネツ殿の合体ってことっすよね。そこで、シイとサオ・・・。シイサオ・・・。シーソー・・・。
Seesawっていうのは、どうでしょう?」


 Seesaw
「じゃあ、これからはシーソーって呼んでくださいっ!」×2


 こうして一行は、明石海峡(あかしかいきょう)に到達した。

 ここで一行は、出来レースのような寸劇をおこなった。


 当時、兵庫県の本州側と淡路島の間に流れる明石海峡のことを速吸門(はやすいなと)と呼んだ。

 速吸門へ

 この潮流の激しい地点に差しかかった時、亀に乗った男が近付いてきた。


 サノ「海流が激しいゆえ、我らを案内せよ!」


 Seesaw
「了解!」×2


 こうして、
Seesawの案内で、一行は現在の大阪湾に辿り着いた。

 紀元前
663211日のことである。


 サノ「ようやく、ここまで来たか・・・。」


 大久米(おおくめ)「大阪湾は満ち潮だと時計回り、引き潮では反時計回りの潮流が発生する海の難所なんすよ。二千年後でも、操船が難しいみたいっすね。」


 稲飯(いなひ)「わしらが来た時は、大阪湾の奥に湖が広がってたんやじ。」


 サノ「兄上! 嘘を言ってはいけませぬぞ!」


 稲飯(いなひ)「本当やじ。これを河内潟(かわちがた)とも、河内湖(かわちこ)とも言うんや。わしらが生きてた頃は、草香江(くさかえ)と呼んでたんやじ。」


 サノ「そんな湖があったような・・・。じゃっどん、それがどうしたのですか?」


 稲飯(いなひ)「この草香江と大阪湾を塞ぐ形で存在していたのが、上町台地(うえまちだいち)と呼ばれる陸地なんや。じゃっどん、完全に塞いでるわけやなく、北側に位置する先っぽの部分だけ開かれてたんやな。」


 草香江

 Seesaw
「ちょっと待ってほしいっちゃ。大阪湾を進んで、これから上陸っちゅう時に、なして、湖の説明が始まって、ついでに台地の話まで出てくるんや?」×2


 大久米(おおくめ)「先ほど、満ち潮の時は時計回りと言ったでしょ?」


 Seesaw
「そ・・・そいが、どうしたんや?」×2


 サノ「あっ!」


 稲飯(いなひ)「サノよ。分かったみたいやな。」


 サノ「台本の『日本書紀(にほんしょき)』に、難波碕(なにわのみさき)に着こうとした時、速い潮流に遭遇して、てげ(すごく)早く到着したと、書かれておりもうした。」


 難波碕

 稲飯(いなひ)「その通り、なぜ潮流が速くなったのかと言うと・・・。」


 大久米(おおくめ)「時計回りの潮流が、北側の開いた部分に流れ込むからっす!」


 稲飯(いなひ)「次回は、なして、難波(なにわ)と呼ばれているのか説明するっちゃ。」


 次回、難波についての解説がおこなわれる。

JW21【神武東征編】EP21 どんがめっさん

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 播磨灘(はりまなだ)の中央に位置する家島諸島(いえしましょとう)に到着した、狭野尊(さの・のみこと)(以下、サノ)一行。


 現在地

 小柄な剣根(つるぎね)が解説していた時、筋肉隆々の日臣命(ひのおみ・のみこと)が、島内の大岩について、自慢気に語ってきた。


 日臣(ひのおみ)「剣根よ! 家島の真浦港(まうらこう)にある大岩は知っちょるか?」


 真浦港にある大岩

 剣根(つるぎね)「亀の形をした大岩・・・その名も『どんがめっさん』にござろう?」


 どんがめっさん
 どんがめっさん1
 どんがめっさん2
 どんがめっさん

 日臣(ひのおみ)「さ・・・さすがっちゃ。」


 そこへ、一代目こと椎根津彦(しいねつひこ)(以下、シイネツ)が加わってきた。


 シイネツ「ふっ・・・剣根よ。まだまだ甘いのう。」


 剣根(つるぎね)「ど・・・どういうことじゃ?」


 シイネツ「わしらが来た時・・・そんな岩はなかったんやっ!」


 剣根(つるぎね)「そ・・・そんな・・・なかった?」


 日臣(ひのおみ)「じゃがっ(その通り)! わしらが来た時は、まだ亀やったんやっ!」


 サノ「また、亀の話か・・・。」


 シイネツ「我が君っ! そんなこと仰らずっ! そこを何とか、あと一回だけっ。」


 興奮気味のシイネツに対し、剣根の息子、夜麻都俾(やまとべ)(以下、ヤマト)が尋ねた。


 ヤマト「ま・・・まさか・・・それが、二号にござりまするか?」


 シイネツ「そのまさかやに!」


 すると、見知らぬ男がやってきて、勝手に会話に入ってきた。


 見知らぬ男「説明長いんやっ! はよ(早く)セリフ言わさせろやっ! 出番待ちで終わらせるんかいっ!」


 サノ「な・・・何者じゃ?!」


 見知らぬ男「いやっ・・・あのう、聞いてません? 宇津彦(うつひこ)から?」


 サノ「も・・・もしやっ! よ・・・四代目か?」


 見知らぬ男「その通りっ! わてが四代目の槁根津日子(さおねつひこ)だす。」


 サノ「槁根津日子? 椎根津彦(しいねつひこ)と似たような名前じゃな。」


 サノの言葉を聞いて、槁根津日子(さおねつひこ)(以下、サオネツ)は熱く語り出した。


 サオネツ「その通り! 『日本書紀(にほんしょき)』においては、椎根津彦として登場し、逆に『古事記(こじき)』では、槁根津日子として登場するんや!」


 シイネツ「実は、登場する場所も別々で、うちが速吸之門(はやすいなと)。サオネツが速吸門(はやすいのと)で登場するんやに。」


 唐突な展開に、次兄の稲飯命(いなひ・のみこと)が過敏に反応した。


 稲飯(いなひ)「ちょっと待てい! 速吸(はやすい)の文字がかぶってるっちゃ! どういうことっちゃ?!」


 シイネツ「そこなんですが、うちの場合は豊予海峡(ほうよかいきょう)。サオネツの場合は明石海峡(あかしかいきょう)のことを指すんですな。」


 二つの海峡

 サオネツ「せやっ! わてが思うに、速吸之門も速吸門も、結局、同じ意味で、固有名詞やのうて、普通名詞なんやないかと思ってるんや。」


 稲飯(いなひ)「普通名詞っちゅうんわ、どういうことっちゃ?」


 サオネツ「流れの速い海峡っちゅう意味なんやないかと・・・。」


 そこへ長兄の彦五瀬命(ひこいつせ・のみこと)(以下、イツセ)も会話に参加してきた。


 イツセ「じゃっどん、サオネツ殿。結局、シイネツと同じやり取りで、サノから槁根津日子の名前を貰うんやろ?」


 サオネツ「せやな。竿を掴んで船に上がったっちゅうことで、名付けられるんや。」


 イツセ「なら、この家島で登場してはダメなのではないか? 汝(いまし)が登場するんは明石海峡やろ?」


 家島と明石海峡

 サオネツ「さすがはイツセ様っ! そうなんですわ。ホンマは明石海峡で登場せにゃならんのに、亀のやつが、家島に伝承残して、大岩になってしもうたさかい、急遽、ここで登場することになったんですわ。」


 話題に上るのを待っていたかのように、亀こと二号が、唐突に鳴いた。


 二号「ンア~。」


 亀2号

 稲飯(いなひ)「おっ・・・おったんか?!」


 サオネツ「まあ、我が君。聞いてやってください。亀のやつ、ホンマ、いじらしいやつなんですわ。」


 サノ「いじらしい?」


 サオネツ「二号・・・もとい亀は、家島の白髪白髭の老人に仕えてたんですが、ある日、老人が水先案内人を頼まれて、サノ様と一緒に向かったんですわ。それで、現地で大活躍しましてな。」


 稲飯(いなひ)「ええ話やないか。大活躍したんやろう?」


 サオネツ「そのあとが問題ですわ。亀は仕事を終えて、先に帰ったんですが、待てども待てども老人は帰って来(き)いひん。やがて待ってるうちに、亀は石になってしもうたんですよ。」


 ヤマト「なるほど・・・。それが『どんがめっさん』と呼ばれし、大岩のことにござるな。」


 どんがめっさん

 サオネツ「そうです。まあ、わては、白髪白髭の老人でもないし、どっちか言うたら、ブラッド・ピットみたいな顔なんですけど、『古事記』では、亀に乗って登場したりするんで、類似性(るいじせい)高いやないかっ! 言うて、作者が無理矢理、登場させたっちゅうわけです。」


 一同「ぶらっどぴっと?」×13


 サオネツ「なんです? よう分からへんけど、おもろいネタ持ってはるんですなぁ。」


 サノ「とにかく、実際は、次の明石海峡の件(くだり)で登場するところを、作者の陰謀で、今回の登場に早められたということか。」


 サオネツ「そうなんですよ。それもノーギャラですよ。どつき廻したろか思いましたわ。」


 サノ「以前、三本足のカラスに遭遇したのじゃが、カラスも、そのようなことを申していたな・・・。」


 サオネツ「カラスですか?」


 四代目ことサオネツの登場で、一行の旅はどう展開していくのであろうか。

 次回に続く。

JW20【神武東征編】EP20 家島と国生み

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狭野尊(さの・のみこと)(以下、サノ)一行は、播磨灘(はりまなだ)の中央に位置する家島諸島(いえしましょとう)に到着した。


 今回の舞台
 家島到着

 ここで、本編の主人公、サノが口を開いた。


 サノ「前回の予告通り、家島(いえしま)に着いたぞ! 兵庫県姫路市に編入されている島じゃ。」


 三兄の三毛入野命(みけいりの・のみこと)(以下、ミケ)が合いの手を入れる。


 ミケ「伝承では、嵐に遭遇して、難を逃れるために立ち寄ったみたいやな。」


 サノ「では、嵐が来るのを待ちまするか?」


 ミケ「だ・・・大丈夫っちゃ。もう、嵐はコリゴリっちゃ。」


 そのとき、目の周りに入れ墨をした大久米命(おおくめ・のみこと)が説明を始めた。


 大久米(おおくめ)「この島には、現在、家島神社(いえしまじんじゃ)があるっす。我(わ)が君(きみ)が、武運長久(ぶうんちょうきゅう)と航海の安全を祈願して、天津神(あまつかみ)を祀ったことが由来っすね。」


 サノ「天津神?」


 大久米(おおくめ)「またまた、知ってるのに~。高天原(たかまのはら)におわします、神々のことっすよ。」


 サノ「読者のためじゃ。許せ。」


 家島神社1
 家島神社2
 家島神社3
 家島神社4
 家島神社5
 家島神社鳥居
 家島神社拝殿

 大久米(おおくめ)「あと、この神社の由緒書によると、家島と名付けたのは、我が君みたいっす。こちらを御覧ください。」



 <港内が風波穏やかで、あたかも我が家のように静かであったので「いえしま」と名付けられた>



 サノ「そうそう、我が命名したのじゃ。島の人は、覚えていてくれたのじゃなぁ。」


 ここで、博学の天種子命(あまのたね・のみこと)が補足説明を始めた。


 天種子(あまのたね)「家島の港は、深く入り込んだ湾で、水深もありますよって、船をつなぎ留めるには、絶好の場所にあらしゃいます。天然の良港ですなあ。嵐に遭わんでも、立ち寄ったと思います。」


 ミケ「明石海峡(あかしかいきょう)に向けて、船団を整えるためやな?」


 家島と明石海峡

 天種子(あまのたね)「さすがはミケ様! そういう軍事的理由もあったでしょうな。家島神社がある場所も、天神鼻(てんじんばな)という岬で、明石海峡に通ずる、海の静けさと厳しさの狭間(はざま)のようなところなので、その解釈は素晴らしいですぞ。」


 天神鼻

 そこへ、小柄な剣根(つるぎね)が乱入してきた。


 剣根(つるぎね)「ちなみに、島の人は、家島のことを『えじま』と呼んでおりまする。」


 サノ「どういうことじゃ? わざわざ『い』だけを省略したのか?」


 剣根(つるぎね)「この島の伝承で、家島は国生み神話にも深い関りがあるとか・・・。」


 サノ「なっ!? 国生みっ!?」


 剣根(つるぎね)「ただ『い』を省略したのではなく、もともと胞島(えじま)と呼ばれていたとか・・・。」


 天種子(あまのたね)「どういうことにあらしゃいます?」


 剣根(つるぎね)「国生み神話の個所で『日本書紀(にほんしょき)』の一説に、磤馭慮島(おのごろじま)を以(も)ちて、胞(え)と為(な)し・・・という記載があるのですが、その胞(え)こそ、この胞島(えじま)なのです。」


 サノ「おい、剣根よ。説明のようで、説明になっておらぬ。オノゴロ島が何なのか。胞(え)とは何なのか。ちゃんと言わねば、読者は全く意味が分からぬであろう?!」


 剣根(つるぎね)「いや、我が君・・・。これには順序というものがありまして・・・。」


 サノ「順序が必要なのか?」


 剣根(つるぎね)「オノゴロ島とは、国生みで伊弉諾尊(いざなぎ・のみこと)と伊弉冉尊(いざなみ・のみこと)が、一発目に生まれた島にござりまする。」


 国生み

 サノ「一発目?」


 剣根(つるぎね)「そのオノゴロ島を胞(え)と呼んでいるのが、最初に説明した『日本書紀』の記述にござりまする。ちなみに、胞とは、胎児を覆う膜のことですな。転じて、兄という意味とされておりまする。」


 サノ「まあ、そういう理由で、胞島(えじま)と呼ばれておるのじゃな。」


 剣根(つるぎね)「左様にござりまする。」


 サノ「しかし、なにゆえ、転じて兄となるのじゃ?」


 剣根(つるぎね)「兄も『え』と呼びまする。中大兄皇子(なかのおおえ・のみこ)など・・・。そういう理由にござりまする。」


 サノ「まだ生まれてない者を参考にするでないっ。」


 剣根(つるぎね)「まあまあ、その辺はともかく、国生み神話の伝承は、昔から語り継がれていたようですぞ。」


 ミケ「家島の隣にある西島(にしじま)の山頂には、イザナギ尊とイザナミ尊が建てた『天(あま)の御柱(みはしら)』といわれる大岩もあるみたいやしな。」


 剣根(つるぎね)「その通りですぞ! 頂上岩(ちょうじょういわ)や、てっぺん石、コウナイの石などともいわれている大岩にござりまするが、そういう見方もあるようですな。」


 天の御柱1
 天の御柱2
 天の御柱3
 天の御柱遠景
 天の御柱近景

 そのとき、筋肉隆々の日臣命(ひのおみ・のみこと)が自慢気に語ってきた。


 日臣(ひのおみ)「剣根よ! 家島の真浦港(まうらこう)にある大岩は知っちょるか?」


 真浦港にある大岩

 剣根(つるぎね)「ふっ・・・日臣よ。わしが知らぬとでも・・・。」


 日臣(ひのおみ)「し・・・知っちょるんか・・・?」


 剣根(つるぎね)「亀の形をした大岩・・・その名も『どんがめっさん』にござろう?」


 どんがめっさん

 日臣(ひのおみ)「さ・・・さすがっちゃ。」


 剣根(つるぎね)「次回は『どんがめっさん』について、説明して参りましょうぞ!」


 つづく

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