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狭野尊(さの・のみこと)(以下、サノ)一行と別れた三毛入野命(みけいりの・のみこと)(以下、ミケ)は、比古麻(ひこま)を供連れにして、高千穂(たかちほ)に戻ることになった。


 途中、これまで出会った人々との再会を楽しみながら、旅を進めたと思う。


 槁根津日子(さおねつひこ)「わては居(お)るようで、居(お)らんのや。」


 二号「ンア~。」



 興世姫(おきよひめ)「ミケ様。我が君は御息災にございますか?」



 小千命(おち・のみこと)「ミケ?! 何をしとるんじゃ!?」



 宇津彦(うつひこ)「えっ? ミケ様? もう一回、水先案内?」


 一号「ンア~。」



 伊佐我(いさが)「これはこれは、ミケ殿。つつがなきや?」


 剛風彦(たけかぜひこ)「あれ? ミケ様ですか?」



 安芸津彦(あきつひこ)「久々じゃけぇ、泣けてきたぁぁ!!」



 熊鰐(くまわに)「どげんしたとです? ミケ様。」



 菟狭津彦(うさつひこ)「ミケ様。理由はともあれ、ごゆっくりしていってください。」


 菟狭津媛(うさつひめ)「ミケ様。うちの人は、元気にしちょる?」



 そして、高千穂・・・



 吾田小橋(あたの・こばし)「ミケ様。お帰りなさいませ。」


 塩土老翁(しおつちのおじ)「ミケ様。久しぶりですな。」



 そして、サノの館・・・



 岐須美美(きすみみ)「父上も兄上も息災なのですね。」


 吾平津媛(あひらつひめ)「まさか、ミケ殿だけ戻ってこられるとは・・・。」


 ミケ「これまでの登場人物との会話で、高千穂に戻ってくるとは思わんかったじ。」


 比古麻(ひこま)「そういうことで、高千穂に戻って参りもうした。」


 高千穂への帰還
 今回の舞台

 ミケ「これからは、曾祖父から父までの日向三代(ひゅうがさんだい)を祀(まつ)っていこうと思っちょる。」


 吾平津媛(あひらつひめ)「宮崎県高千穂町の高千穂神社(たかちほじんじゃ)のことですね。二上山(ふたがみさん)と槵觸峯(くしふるのみね)の間にある神社にござりまする。」


 高千穂神社全域
 高千穂神社と二上山と槵觸峰
 高千穂神社中域
 高千穂神社小域

 ミケ「さすがは吾平津殿。話が早い。ちなみに、二上山も天孫降臨の地であるという伝承が残ってるんやじ。」


 吾平津媛(あひらつひめ)「その二上山なんですが、今、空前絶後の状況が発生しておるのです。」


 ミケ「そ・・・それは何や?」


 岐須美美(きすみみ)「二上山の千々ヶ窟(ちぢがいわや)に鬼が住み着いたのです。」


 高千穂(千々ヶ窟)

 ミケ「鬼っ!?」


 吾平津媛(あひらつひめ)「鬼と言っても、山賊や無法者という意味でしょうね。」


 岐須美美(きすみみ)「その鬼が、祖母嶽明神(そぼだけみょうじん)の娘さんを攫(さら)って、鬼ヶ窟(おにがいわや)に隠してしまったそうなのです。ちなみに、祖母嶽は、二千年後の祖母山(そぼさん)のことです。」


 祖母山
 祖母山と千々ヶ窟
 高千穂神社と祖母山
 祖母山2

 ミケ「祖母山が、ここでつながってくるんやな。」


 岐須美美(きすみみ)「前回、海中で伯父上が祈ったと嘘を吐いた件ですね。」


 ミケ「あ・・・あれは、作者がやれち、言うてやな・・・。じゃ・・・じゃっどん、サノがいない間に、高千穂が、そんなことになっちょるとは・・・。」


 比古麻(ひこま)「あのう、吾平津様、岐須美美様。鬼の話題が出たということは・・・。」


 吾平津・岐須美美「討伐を御願い致しまする。」×2


 比古麻(ひこま)「な・・・なんと! 付いて来ねば良かった・・・。」


 ミケ「まあまあ、友情出演っちゅうことで、勘弁してくんない(ください)。」


 こうして鬼退治に向かった二人の前に、紙面の都合で、鬼が現れた。


 鬼八(きはち)「我が名は鬼八。我が刃(やいば)、受けてみよっ!」


 ミケ「あほう! 勝手に暴れまわりおって! いくぞ! 比古麻っ! 気を解放しろっ!」


 比古麻(ひこま)「はいっ! 全集中っ!」


 鬼八(きはち)「や・・・やばいっちゃ。逃げるっちゃ。」


 ミケ・比古麻(ひこま)「待てい!」×2


 鬼八は逃げた。

 肥後(ひご:今の熊本県)や阿蘇(あそ)に逃げたのである。

 ちなみに、阿蘇とは、阿蘇山(あそざん)周辺の地域である。

 鬼八の逃亡先

 三毛入野と比古麻は、逃(のが)すまじと、これを懸命に追いかけた。

 そしてついに、鬼八を討ち取ったのであった。


 ミケ「死骸を埋め、八尺の石で押さえるんや。」


 比古麻(ひこま)「分かりもうしたっ。」


 ところが鬼八は、石の封印を払いのけ、魔力で蘇生(そせい)してしまった。


 鬼八(きはち)「まだまだ死にません。ちなみに、鎮め石は、高千穂神社に残ってるっちゃ。川沿いには、わしが抵抗した際に投げた石も残ってるっちゃ。」


 高千穂神社の鎮め石
 高千穂 鬼八の投げた石

 ミケ「こうなったら三分割っちゃ! 神の呼吸! 三権分立!」


 比古麻(ひこま)「勝手な技名をつけて良いのですか?! 三つに切り分けるだけでは!?」


 ミケ「終わりよければ・・・っちゃ。三権分立!」


 鬼八(きはち)「うぐっ・・・。わしの塚も残ってるじ・・・。鬼八塚っちゃ・・・ガクッ。」


 鬼八の首塚地図
 高千穂(鬼八の首塚)
 鬼八の首塚写真

 鵜目姫(うのめひめ)「ありがとうございました。ちなみに、鬼八塚は高千穂役場の近くです。」


 ミケ「唐突やな。汝(いまし)は誰ね?」


 鵜目姫(うのめひめ)「祖母嶽明神の娘、鵜目姫にございます。」


 ミケ「鵜目姫・・・。結婚しよう。」


 鵜目姫(うのめひめ)「はいっ。」


 比古麻(ひこま)「唐突すぎまするが、お二人は、これが縁で結婚されるのですな。」


 ミケ「じゃが(そうだ)。わしと妻と八人の息子が高千穂神社に祀られてるっちゃ。これを十社大明神(じっしゃだいみょうじん)と言うんやじ。」


 鵜目姫(うのめひめ)「それでは息子たちの登場です。どうぞっ。」


 御子太郎(みこたろう)「長男って分かるよね。我々の子孫が神主やってたみたい。」


 二郎(じろう)「次男です。じゃっどん、二千年後は行方不明。」


 三郎(さぶろう)「南北朝時代くらいまでは確認できるみたいですけどね。」


 畝見(うねみ)「どこ行ったんでしょうね?」


 照野(てるの)「戦国時代の激動で消えていったのかな?」


 大戸(おおと)「それだけじゃないっちゃ。わしら自身にも、特に伝承がないんや。」


 霊社(れいしゃ)「それだけじゃないっちゃ。わしなんて、音読みやぞ!」


 浅良部(あさらべ)「ホントだ。霊社だけ音読みだ。」


 比古麻(ひこま)「それでは、それがしは木国(きのくに:今の和歌山県)に戻りまする。」


 ミケ「毎年、
1122日から23日には『神話の高千穂夜神楽まつり』をやってるっちゃ。ぜってい見に来てくれよなっ。比古麻、読者のみなさん、今まで、ありがとう! お達者でぇぇ!」


 ともあれ、三毛入野は高千穂を守ることを使命としたのであった。