カテゴリ

カテゴリ:高千穂編

JW35.6【高千穂編】EP2 鬼八の刃

カテゴリ:

狭野尊(さの・のみこと)(以下、サノ)一行と別れた三毛入野命(みけいりの・のみこと)(以下、ミケ)は、比古麻(ひこま)を供連れにして、高千穂(たかちほ)に戻ることになった。


 途中、これまで出会った人々との再会を楽しみながら、旅を進めたと思う。


 槁根津日子(さおねつひこ)「わては居(お)るようで、居(お)らんのや。」


 二号「ンア~。」



 興世姫(おきよひめ)「ミケ様。我が君は御息災にございますか?」



 小千命(おち・のみこと)「ミケ?! 何をしとるんじゃ!?」



 宇津彦(うつひこ)「えっ? ミケ様? もう一回、水先案内?」


 一号「ンア~。」



 伊佐我(いさが)「これはこれは、ミケ殿。つつがなきや?」


 剛風彦(たけかぜひこ)「あれ? ミケ様ですか?」



 安芸津彦(あきつひこ)「久々じゃけぇ、泣けてきたぁぁ!!」



 熊鰐(くまわに)「どげんしたとです? ミケ様。」



 菟狭津彦(うさつひこ)「ミケ様。理由はともあれ、ごゆっくりしていってください。」


 菟狭津媛(うさつひめ)「ミケ様。うちの人は、元気にしちょる?」



 そして、高千穂・・・



 吾田小橋(あたの・こばし)「ミケ様。お帰りなさいませ。」


 塩土老翁(しおつちのおじ)「ミケ様。久しぶりですな。」



 そして、サノの館・・・



 岐須美美(きすみみ)「父上も兄上も息災なのですね。」


 吾平津媛(あひらつひめ)「まさか、ミケ殿だけ戻ってこられるとは・・・。」


 ミケ「これまでの登場人物との会話で、高千穂に戻ってくるとは思わんかったじ。」


 比古麻(ひこま)「そういうことで、高千穂に戻って参りもうした。」


 高千穂への帰還
 今回の舞台

 ミケ「これからは、曾祖父から父までの日向三代(ひゅうがさんだい)を祀(まつ)っていこうと思っちょる。」


 吾平津媛(あひらつひめ)「宮崎県高千穂町の高千穂神社(たかちほじんじゃ)のことですね。二上山(ふたがみさん)と槵觸峯(くしふるのみね)の間にある神社にござりまする。」


 高千穂神社全域
 高千穂神社と二上山と槵觸峰
 高千穂神社中域
 高千穂神社小域

 ミケ「さすがは吾平津殿。話が早い。ちなみに、二上山も天孫降臨の地であるという伝承が残ってるんやじ。」


 吾平津媛(あひらつひめ)「その二上山なんですが、今、空前絶後の状況が発生しておるのです。」


 ミケ「そ・・・それは何や?」


 岐須美美(きすみみ)「二上山の千々ヶ窟(ちぢがいわや)に鬼が住み着いたのです。」


 高千穂(千々ヶ窟)

 ミケ「鬼っ!?」


 吾平津媛(あひらつひめ)「鬼と言っても、山賊や無法者という意味でしょうね。」


 岐須美美(きすみみ)「その鬼が、祖母嶽明神(そぼだけみょうじん)の娘さんを攫(さら)って、鬼ヶ窟(おにがいわや)に隠してしまったそうなのです。ちなみに、祖母嶽は、二千年後の祖母山(そぼさん)のことです。」


 祖母山
 祖母山と千々ヶ窟
 高千穂神社と祖母山
 祖母山2

 ミケ「祖母山が、ここでつながってくるんやな。」


 岐須美美(きすみみ)「前回、海中で伯父上が祈ったと嘘を吐いた件ですね。」


 ミケ「あ・・・あれは、作者がやれち、言うてやな・・・。じゃ・・・じゃっどん、サノがいない間に、高千穂が、そんなことになっちょるとは・・・。」


 比古麻(ひこま)「あのう、吾平津様、岐須美美様。鬼の話題が出たということは・・・。」


 吾平津・岐須美美「討伐を御願い致しまする。」×2


 比古麻(ひこま)「な・・・なんと! 付いて来ねば良かった・・・。」


 ミケ「まあまあ、友情出演っちゅうことで、勘弁してくんない(ください)。」


 こうして鬼退治に向かった二人の前に、紙面の都合で、鬼が現れた。


 鬼八(きはち)「我が名は鬼八。我が刃(やいば)、受けてみよっ!」


 ミケ「あほう! 勝手に暴れまわりおって! いくぞ! 比古麻っ! 気を解放しろっ!」


 比古麻(ひこま)「はいっ! 全集中っ!」


 鬼八(きはち)「や・・・やばいっちゃ。逃げるっちゃ。」


 ミケ・比古麻(ひこま)「待てい!」×2


 鬼八は逃げた。

 肥後(ひご:今の熊本県)や阿蘇(あそ)に逃げたのである。

 ちなみに、阿蘇とは、阿蘇山(あそざん)周辺の地域である。

 鬼八の逃亡先

 三毛入野と比古麻は、逃(のが)すまじと、これを懸命に追いかけた。

 そしてついに、鬼八を討ち取ったのであった。


 ミケ「死骸を埋め、八尺の石で押さえるんや。」


 比古麻(ひこま)「分かりもうしたっ。」


 ところが鬼八は、石の封印を払いのけ、魔力で蘇生(そせい)してしまった。


 鬼八(きはち)「まだまだ死にません。ちなみに、鎮め石は、高千穂神社に残ってるっちゃ。川沿いには、わしが抵抗した際に投げた石も残ってるっちゃ。」


 高千穂神社の鎮め石
 高千穂 鬼八の投げた石

 ミケ「こうなったら三分割っちゃ! 神の呼吸! 三権分立!」


 比古麻(ひこま)「勝手な技名をつけて良いのですか?! 三つに切り分けるだけでは!?」


 ミケ「終わりよければ・・・っちゃ。三権分立!」


 鬼八(きはち)「うぐっ・・・。わしの塚も残ってるじ・・・。鬼八塚っちゃ・・・ガクッ。」


 鬼八の首塚地図
 高千穂(鬼八の首塚)
 鬼八の首塚写真

 鵜目姫(うのめひめ)「ありがとうございました。ちなみに、鬼八塚は高千穂役場の近くです。」


 ミケ「唐突やな。汝(いまし)は誰ね?」


 鵜目姫(うのめひめ)「祖母嶽明神の娘、鵜目姫にございます。」


 ミケ「鵜目姫・・・。結婚しよう。」


 鵜目姫(うのめひめ)「はいっ。」


 比古麻(ひこま)「唐突すぎまするが、お二人は、これが縁で結婚されるのですな。」


 ミケ「じゃが(そうだ)。わしと妻と八人の息子が高千穂神社に祀られてるっちゃ。これを十社大明神(じっしゃだいみょうじん)と言うんやじ。」


 鵜目姫(うのめひめ)「それでは息子たちの登場です。どうぞっ。」


 御子太郎(みこたろう)「長男って分かるよね。我々の子孫が神主やってたみたい。」


 二郎(じろう)「次男です。じゃっどん、二千年後は行方不明。」


 三郎(さぶろう)「南北朝時代くらいまでは確認できるみたいですけどね。」


 畝見(うねみ)「どこ行ったんでしょうね?」


 照野(てるの)「戦国時代の激動で消えていったのかな?」


 大戸(おおと)「それだけじゃないっちゃ。わしら自身にも、特に伝承がないんや。」


 霊社(れいしゃ)「それだけじゃないっちゃ。わしなんて、音読みやぞ!」


 浅良部(あさらべ)「ホントだ。霊社だけ音読みだ。」


 比古麻(ひこま)「それでは、それがしは木国(きのくに:今の和歌山県)に戻りまする。」


 ミケ「毎年、
1122日から23日には『神話の高千穂夜神楽まつり』をやってるっちゃ。ぜってい見に来てくれよなっ。比古麻、読者のみなさん、今まで、ありがとう! お達者でぇぇ!」


 ともあれ、三毛入野は高千穂を守ることを使命としたのであった。

JW35.5【高千穂編】EP1 三毛入野は主人公

カテゴリ:

紀元前663年、狭野尊(さの・のみこと)(以下、サノ)一行は、熊野の海で嵐に遭遇した。

 英虞崎への道

 そして、この状況に耐え切れず、二人の兄は海に飛び込んでしまったのであった。

 稲飯命(いなひ・のみこと)は常世(とこよ)の国に行き、鋤持神(さいもちのかみ)となったが・・・。



 
 もう一人の兄、三毛入野命(みけいりの・のみこと)(以下、ミケ)は、荒れ狂う波にもまれながら、遥か故郷の方に目をやった。


 ミケ「この海の向こうに高千穂があるんやな・・・。もう一度、故郷を見てみたかったっちゃ・・・。」


 そんなことを考えていた三毛入野であったが、ふと、弟や甥たちのことが気になった。


 ミケ「そ・・・そうや。サノたちが助かるように祈願しよう。我が祖母が祀(まつ)られちょる添利山(そほりやま)の方に向かって祈ろう。確か、二千年後は祖母山(そぼさん)と呼ばれていたっけ・・・。大分県と宮崎県の県境とか、作者が言っちょったな・・・。」


 祖母山
 祖母山2
 
 吹きすさぶ風波の中、三毛入野の意識は遠退いていった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 

 謎の男「ミケ様! ミケ様!」


 ミケ「うっ・・・。こ・・・ここはどこや?」


 謎の男「ここは木国(きのくに)の名草(なくさ)です。読者向けに言えば、和歌山県ですね。」


 今回の舞台
 日前宮1

 ミケ「そ・・・それで、汝(いまし)は誰や?」


 謎の男「比古麻(ひこま)にござりまする。天道根(あまのみちね)の息子の・・・。
30話で、お別れした比古麻ですよ!」


 ミケ「そ・・・その比古麻が、なして(なぜ)ここにおるんや?」


 比古麻(ひこま)「ミケ様は、名草に流れ着いたのです。地元の人たちが、岸辺に流れ着いていたミケ様を見つけ、ここまで運んできたのですよ。生きている以上、どこかに流されたはずだと、作者は考えたようでして、それなら、名草に辿り着いた方がいいだろうと判断したようです。」


 ミケ「そ・・・そうやったか・・・。」


 比古麻(ひこま)「ゆっくりと静養してくださりませ。高千穂(たかちほ)は逃げませぬゆえ。」


 ミケ「高千穂? どういうことや?」


 比古麻(ひこま)「ミケ様は、このまま高千穂に戻られるのです。」


 ミケ「サノたちと合流せずに、高千穂に戻るんか?」


 比古麻(ひこま)「左様にござりまする。高千穂にて、様々な伝承を残しておられるのです。」


 ミケ「い・・・稲飯(いなひ)の兄上は?」


 比古麻(ひこま)「稲飯様は、神になられもうした。生き残ったのは、ミケ様だけにござりまする。」


 ミケ「わしだけ生き残ったのか・・・。それもこれも伝承のためと?」


 比古麻(ひこま)「そう思いまする。あと、一点だけ、指摘しておきたいことがござりまする。」


 ミケ「なんや?」


 比古麻(ひこま)「海で溺れていた時に、祖母山(そぼさん)に向かって祈っておられましたな?」


 ミケ「な・・・なぜ、それを知っちょるんや?」


 比古麻(ひこま)「作者から聞きましたぞ。あの伝承は、我が君が、船の上で祈ると嵐が鎮(しず)まったという話のはず・・・。なにゆえ、ミケ様が祈っておられるのです!?」


 ミケ「い・・・いやっ。あれは、作者が、わしが祈った方が劇的になるち、言うてやなぁ・・・。」


 比古麻(ひこま)「げ・・・劇的?」


 そこへ比古麻の父、天道根命(あまのみちね・のみこと)(以下、ミチネ)もやって来た。


 ミチネ「おお、ミケ様、意識を取り戻されましたか・・・。」


 ミケ「おお、ミチネか。心配かけてすまなかったっちゃ。今、比古麻と話しちょったんやが、わしは、このまま高千穂に帰ることになっておるようや。」


 ミチネ「タケミーの言っていた、スピンオフと言うやつですな。」


 ミケ「タ・・・タケミーっちゅうのは誰ね?」


 ミチネ「あっ! 言い忘れておりましたな。タケミーとは、武甕雷神(たけみかづちのかみ)のことにござりまする。」


 ミケ「なっ!? そんな大御所が?! どういうことや!?」


 比古麻(ひこま)「我が君から文が届いたのです。タケミーから、ミケ様の話を聞き、スピンオフがあるので、こちらに流れ着くかもしれぬと・・・。」


 ミケ「わしが気を失っている間に、いろいろあったんやな・・・。サノたちは無事なのか?」


 ミチネ「我が君たちは、息災のようですぞ。」


 ミケ「そうか・・・。無事に嵐を脱したんやな・・・。」


 比古麻(ひこま)「それから、天照大神(あまてらすおおみかみ)様にも会ったそうですぞ。」


 ミケ「なっにっぃぃぃ!!! わしも会いたかったぁぁ!!!」


 比古麻(ひこま)「それがしも同じ思いです。一緒に旅をしていれば、会えていたのかと思うと・・・。」


 ミチネ「まあまあ、それは仕方のないこと・・・。それと、我が君から、言伝がありまする。」


 ミケ「なんや?」


 ミチネ「高千穂に戻ったら、吾平津媛(あひらつひめ)や岐須美美(きすみみ)様に、皆、元気にしていると伝えてほしいと・・・。」


 ミケ「分かった。伝えておくっちゃ。では、サノたちも元気にしちょるということで、わしは、わしの物語を進めにゃな。」


 比古麻(ひこま)「もう旅立ちまするか?」


 ミケ「作者、曰(いわ)く、紙面の都合っちゃ。」


 ミチネ「分かりもうした。では、ミケ様、愚息の比古麻もお連れくださりませ。」


 比古麻(ひこま)「えっ!?」


 ミチネ「登場回数が少ないと嘆いておったではないか。この機会に、御同行させてもらえ。」


 ミケ「面白そうや。このまま、わしと共に高千穂に向かおうぞ。」


 比古麻(ひこま)「良いのですか? 伝承には全く登場せぬのですよ?」


 ミケ「いっちゃが、いっちゃが(いいよ、いいよ)。一人やと淋しいかい(から)、わしとしても気が楽になるっちゃ。」


 こうして、三毛入野命は比古麻と共に高千穂に戻ることとなった。

 つづく

このページのトップヘ

見出し画像
×